【赤ワインの醸造】
- 発酵容器は密閉式タンク(ステンレス、木、コンクリート)で温度管理付き。
- 酵母は安定性を重視して、ほとんどが培養酵母を使用。
- 発酵温度と醸し期間はワインスタイルとヴィンテージ品質に応じて調整:
- 早飲みタイプ:中温発酵+5〜7日間の短いスキンコンタクト(果実味重視、タンニン抽出抑制)
- 熟成向けワイン:中温〜高温発酵+合計14〜30日間のマセレーション(構造と熟成力を高める)
- 不良年:熟していない果実が多いため、醸し期間は短縮される
- 発酵後はフリーランジュースとプレスワインに分けられ、両方とも**バリック(225L樽)**へ。
フリーランに構造が足りない場合は、プレスワインをブレンドで補うことがある。 - マロラクティック発酵はタンクまたは樽内で実施。樽内の方が木との調和が取れると考える造り手もいる。
高級ワインは春の試飲会に向けてマロラクティック発酵を早く終えるため、接種とセラー加温が行われる。 - 熟成容器の違い:
- 簡易な赤:ステンレス・コンクリートタンク、大樽で4〜6ヶ月熟成(オークチップ使用可)
- 高級赤:フレンチオークのバリック(新樽〜2年使用樽の混合)。最近は新樽比率を抑える傾向
- トーストレベルは中〜中強程度、複数の樽メーカーを使って複雑さを演出
- 熟成期間: 18〜24ヶ月(凝縮度とタンニン量に応じて調整)
- 伝統的には3ヶ月ごとに澱引き。最近では澱の上にそのまま置き、マイクロオキシジェネーションで酸素供給を代替する例もあり(還元防止、タンニンの柔らかさを得るため)
- ブレンドのタイミング:
- 多くのシャトーは冬にブレンドし、春のプリムール試飲会に備える。ここでセカンド・サードラベルへの振り分けも行われる。
- 少数派は瓶詰め直前にブレンドし、熟成の進行を見極めた上で決定。
- トップシャトーでは醸造コンサルタントがブレンドの要として活躍することが多い。
【ロゼワインの醸造】
- ボルドーでは、濃い色調のクラレット(Clairet)と淡いロゼの2スタイルがある。
- 主な品種はメルロとカベルネ・ソーヴィニヨン。
- 旧来は若木の果実や**セニエ法(短時間のマセレーション+引き抜き)**による副産物として造られていた。
- 現代的な淡いスタイルでは直接圧搾法が主流。
【白ワインの醸造】
- ブドウは収穫後、すぐにプレスするか、最大24時間までスキンコンタクト後にプレスする。
- すぐにプレス:フレッシュさ重視
- 皮と接触:香り・フェノールの複雑性が増す(ただし健全な果実が必須)
- 早飲み白:ステンレスタンクで低温発酵、数ヶ月タンク熟成後に瓶詰め
- 中価格帯:澱の上で6〜12ヶ月熟成し、重みと複雑さを与える
- 高級白:バリックで発酵・熟成(一部新樽使用)、マロラクティック発酵をブロックして酸を保持
- バトナージュ(澱攪拌)はかつて一般的だったが、最近では過剰なボディになる懸念から控える造り手も
- 現代ボルドー白のスタイルにはデュブルデュー教授とアンドレ・リュルトンの影響が大きい
→ ソーヴィニヨン・ブラン重視、香りの抽出のためのスキンコンタクト、新樽比率の削減などを提唱
【甘口ワイン(貴腐ワイン)】
- ボルドーの伝統的産品で、主に貴腐(Botrytis cinerea)ブドウから造られる。
- 重要なのは畑での管理:
- 収量は非常に少なく(スティルワインの1/3以下)、剪定や不健全果の除去が徹底される
- 貴腐菌で果汁が減少するため、10hL/ha以下も一般的(例:ソーテルヌ、バルサック)
- 収穫は熟練の摘み手による**複数回(最大12回以上)**の選果
→ グレーロットやブラックロットではなく、真のノーブルロットを見極める技術が必要 - 貴腐の度合いは以下に左右される:
- 気象条件(朝霧と日中の乾燥)
- 畑の立地(川・霧の発生源への近さ)
- 収穫のタイミングを遅らせる覚悟
- 複数回の選果に投資できるかどうか
- 醸造は基本的に辛口白と同様の方法で行われる(発酵容器はステンレス・コンクリ・バリックなど)
- トップクラスの甘口ワインは、
- バリック発酵(果実とオークの融合)+18〜36ヶ月の熟成
- 新樽比率30〜50%(例:シャトー・ディケムは100%)
→ 酸化熟成が進み、複雑さが増す。コストも高騰
- 一方、格下アペラシオンでは**無樽・早期瓶詰め(翌年)**のスタイルが多い