“産地で学ぶ”ワイン理論シリーズ|Vol.7 ボルドーの格付け制度とビジネス

セオリー
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※本記事は、構成や文案作成の際にAI(ChatGPT)を活用しています。

ボルドーの格付け制度

1855年格付け

  • メドック地区の高評価シャトーと、グラーヴのシャトー・オー・ブリオン、ソーテルヌを対象に、当時の価格を基に格付け。
  • メドック:1級〜5級まで5段階。
    ソーテルヌ:1級、2級に分類。シャトー・ディケムのみ特別枠「特別第一級」。
  • 現在もほぼ変更なし。メドックの生産量の約4分の1を占める。
  • クラッシェ(格付け)シャトーは自社で瓶詰めが義務。

グラーヴ格付け

  • 1959年に制定。価格、知名度、テイスティングによる品質で決定。
  • ペサック・レオニャン地区に限定。赤、白または両方で格付けされる。
  • サブクラスなしのシンプルなリスト。全16シャトー。

サンテミリオン・グラン・クリュ格付け

  • サンテミリオン・グラン・クリュAOCの一部のシャトーのみ対象。
  • 初版は1955年で、おおむね10年ごとに見直されている。
  • テロワール、生産方法、評価、商業的要素、10ヴィンテージ以上のブラインドテイスティングで判定。
  • プレミア・グラン・クリュ(AとB)、グラン・クリュ・クラッセの2階層。
  • 最新は2022年版。ただし訴訟などで評判が低下し、アンジェリュス、オーゾンヌ、シュヴァル・ブランの3大シャトーは格付けから離脱。

クリュ・ブルジョワ(メドック)

  • 1932年に開始。クラッシェ未満だが高品質の証。
  • 2010年以降、毎年のワイン単位で認定。2018年ヴィンテージからは5年間有効の3階層制度に復帰:
    • クリュ・ブルジョワ
    • クリュ・ブルジョワ・シュペリュール
    • クリュ・ブルジョワ・エクセプショネル
  • メドック内のどの生産者も申請可能。

ポムロール

  • 高品質だが、唯一の格付け制度なしのAOC。
  • 例:ペトリュスなど超高評価シャトーが存在。

2. ボルドーのワインビジネス

シャトーと生産構造

  • シャトー:大邸宅から農家まで含む、約7,000軒。
  • 小規模農家が統合され、平均面積は20ha(2022年)。
  • 年間生産量:約8億本以上。
  • 協同組合の役割が大きく、2018年時点で生産量の約25%を占め、栽培農家の40%が加盟。

生産コスト(2017年推計)

  • ボルドーAOC:1本あたり0.57ユーロ
  • メドックの個人エステート:2.35ユーロ
  • 格付けシャトー:16ユーロ
    ※土地代やローン利息除く。格付けでは高密植、収量制限、選果、樽熟成でコスト増。

評価システム

  • 格付けの他、ロバート・パーカーに代表される100点満点評価が世界市場で重要。

マーケット

  • 2021年の総売上は40億ユーロ超。
  • 国内販売55%(その約半分がスーパー、平均単価5.96ユーロ)。
  • 輸出量は全体の45%、金額では52%。主要輸出先は中国、米国、ベルギー。

ラ・プラス・ド・ボルドー

  • ボルドー独自の商流システム。
    • 生産者 → ネゴシアン(商人、70%を取り扱い) → 卸・小売
    • 仲介役:コルトゥリエ(ブローカー)が生産者とネゴシアンをつなぐ。
  • ネゴシアンがシャトーからワインを仕入れ、世界170か国以上に流通。
  • 複数のネゴシアンに割り当て販売し、安定した販路を確保。

大きく二極化する市場

  • 大多数のワイン(ボルドーAOC、シュペリュール)は低価格帯。
    • 国内需要低下と海外競争(チリ、オーストラリア)で価格が上がりにくい。
    • 協同組合、小規模農家、大手企業(例:カステル)により大量生産され、主にスーパー向け。

アン・プリムール制度とは

  • 概要
    格付けシャトーなどの高級ワインを、ボトリング前に「先物取引」として販売する仕組み。
    ワインは収穫の翌年春に、樽熟成中の段階で取引される。
  • 目的
    • 購入者は入手困難なワインを比較的安価に確保できる。
    • シャトーは出荷前に現金を得られ、次のヴィンテージの運転資金にできる。
  • 歴史
    第二次世界大戦後の資金難から発展。
    消費者の関心が高まったのは1982年ヴィンテージから。

流れ

  1. 収穫翌年4月ごろ、樽サンプルをシャトーが提供。
  2. 世界中のワイン商やジャーナリストが試飲し、評価と点数を発表。
  3. シャトーが価格を設定し、ネゴシアン(商人)を通じて最初の分(ファースト・トランシュ)を販売。
    • 評判や需要に応じて価格を段階的に上げ、追加分を販売。
  4. バイヤーや投資家が必要数を購入し、消費者はワイン商経由で注文。
  5. 最終顧客には瓶詰め後(約1年〜1年半後)に納品される。

メリットとデメリット

生産者側消費者側
メリット低価格の初回分で市場価格を探れる希少ワインを確保できる
早期に資金回収できる理論上、店頭より安く買える
デメリット完成後のワインの方が高く売れた可能性樽サンプルと完成品が異なる可能性
ネゴシアンの倒産リスクがある中間業者が倒産するリスク
価格が届く前に下落する可能性

現状の課題

  • 2000年代、中国の需要増で価格が高騰し、出来の悪い年でも高値が続いた。
  • 一部の買い手が損失を被り、信用低下。
  • 著名評論家の評価が価格に大きく影響する点も議論の的。
  • シャトー・ラトゥールなど一部のトップシャトーはアン・プリムールから撤退し、瓶詰め後販売に移行。
  • 資金繰りに余裕のないシャトーは依然として重要な販売手段として活用。

その他のポイント

  • 購入価格は出荷元価格(ex cellar)、輸入税などは含まれない。
  • 完成後のワインは適切な温度・湿度で専門倉庫に保管される。
  • 購入者は飲み頃まで保管、または転売して利益を狙うこともできる。
  • ボルドー(特に1級などトップワイン)は二次流通市場での取引量が世界最大規模。
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